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出店する場所もそうした人々が多く住む大都市郊外のアッパーミドル住宅地に近いショッピングセンターです。
ターゲットがはっきりしていますから、品揃えはそうした顧客層が欲しがりそうなものを揃え、サービスも彼らが心地よいと感じるようなものにすることを狙っています。 たとえば靴の在庫が一○万足あることなども、その一つです。
仕事に追われる中年客は買い物にあまり多くの時間を取られたくないと考えています。 彼らがN百貨店で気に入ったデザインの靴を見つけても、自分のサイズが在庫になかったら、それまでに費やした時間はすべて無駄になってしまいます。
そうしたことがないように、同社では一○万足もの在庫を揃えているのです。 店作りにおいてもすべてが大人の視点から作られています。
たとえば、店内には顧客の視線を妨げるような無駄な壁がなく、店内すべてを見通すことができ、欲しい商品が素早く見つけられるように、壁面のディスプレーが工夫されており、そのために什器も低くしてあります。 また忙しい生活を送っている中年客が、落ちついた雰囲気の中で心地よく買い物ができるように、店内は常時静かに保たれています。

ときおり聞こえてくるのは生演奏されているピアノの音です。 実はこのような心地よさがN百貨店の魅力なのですが、数年前、日本で同社が話題になったとき、この生演奏だけが「高級感の演出」などとして取り上げられてしまい、それをまねした(そして失敗した)日本企業もあったようです。
生演奏が魅力なのではなく、落ちついた静けさが魅力であるというところが重要なのです。 さて、そんなN百貨店がどのようにeビジネス化を進めたのでしょうか。
N百貨店では以前からホテルのコンセルジェのようなサービスを顧客に提供していました。 手荷物を預かったり、宅配を手配したり、旅行客に対してはホテルを予約したり、オペラのチケットを取ったりすることすらあります。
このコンセルジェサービスはショッピングの手助けも当然行います。 また電話でそうしたサービスを依頼する人も多いようです。
たとえば、取引先に何かギフトを持参しなければならないときなど、ここに連絡しておけば、決められた予算と条件に見合ったギフトを選んでおいてくれます。 あとは予約した時間に同店内にあるコンセルジェデスクに出向いて、支払いを済ませ商品を受け取るだけです。

このようなサービスはN百貨店にとっては特別なものではなく、一つの社風となっているものであり、顧客もそれを期待するようになっています。 それをeビジネス化したものが「N百貨店・パーソナルタッチ・アメリカ/NPTA」と呼ばれるものです。
その内容は右の部分で述べたコンセルジェのサービスを、そのまま電子メールで置き換えたものです。 NPTAに、自分の欲しいもの(たとえばxルマガジン』6月号で見たDKの黒いスーツ、サイズは6)を電子メールで伝えると、担当者(パーソナルショッパーといいます)が店内を回って商品を探し出し、その価格などを電子メールで送り返してきます。
購入する際には無料電話番号に電話して、クレジットカード番号を伝えてオーダーすると、数日後に宅配されてくる、ということになります。 また最初の問い合わせの際に、好みの色、各部分のサイズなど、個人の情報に答えるアンケートがあるので、それに答えておけば、次回からは何が欲しいのかだけを伝えるだけで済むようになります。
そして、このサービスを使い込んでいくと、N百貨店の方から「**様のお気に入りのブランドで好みの色の靴がいついつからセールになります」といったお買い得情報も流されてくるようになります。 さらに万が一、届いた商品が気に入らなかった場合にも、N百貨店らしさが発揮されます。
同社はどのような理由であれ、返品を受け付けるという姿勢をこれまで貫いてきていることでも有名です。 ギフトなどに関しては、レシートがなくても返品を受け付けてくれます。
ですから商品を実際に目にすることなくオーダーする顧客にとっても、そうした同社の返品システムによって保証されているので、気軽にオーダーできますし、それがまたリピートのオーダーにつながってきます。 結局NPTAは、同社が以前から行ってきた定評あるサービスを、距離的、あるいは時間的にN百貨店に来ることのできない人に対しても提供できるようにするためのものです。
つまり最初にeビジネス化が目的とされたのではなく、顧客満足のレベルを向上させるための道具として自然に電子メールが使われ始め、その結果として本格的なeビジネス化が進められてきたのだ、ということです。 米国人がもっとも嫌がるショッピングが二つあるとよく言われます。
一つはスーパーマーケットでの食料品や日常品のショッピングです。 そして意外なことに、もう一つは自動車のショッピングです。
日本同様、米国でも自動車の価格というのは交渉次第である程度安くなるものですから、懸命に交渉を行うのですが、相手は海千山千のセールスマンです。 思うようには行きません。
私の経験から言えば、多くの場合、長い時間を交渉に費やした上で、嫌な思いをして、結局は妥協して車を買うことになります。 これは私だけの個人的な印象ではないようで、自動車購入は常に米国人の嫌な買い物リストの最上位にランクされています。
そして自動車購入に関わるこれらのマイナス要素をすべて排除するために生まれたのが、ワンプライス・コンセプトで有名なサターンだったのです。 嫌なショッピングの一つであるスーパーマーケットの方はP社がeビジネス化を行い、それによって消費者に利便性を与えることに成功しています。

つまり嫌な行為だからこそ、そこにビジネスチャンスがあるわけです。 では、もう一つ残された、嫌われている行為である自動車のショッピングについてはどうでしょうか。
そこに画期的な自動車購入の方法が出現しました。 インターネットを利用した自動車ディーラー紹介サービスです。
オートバイテルx)というのがその代表的な企業ですが、現在これ以外にも、急成長するこの市場を狙って様々な企業が次々に参入を開始しています。 たとえばM社のカーポイント、オートウェブなどがそれにあたります。
これらの企業は直接消費者に向けて自動車を販売するのではなく、あくまでも自動車に関する情報の提供と、ディーラーの紹介をサービス内容としています。 調査会社JDパワー社は、九七年度に新車購入を希望する人が価格など情報収集に際してインターネットを利用した割合は前年の一○%から一六%に増加している、と発表しています。
さらにO社などオンラインの自動車購入サービスを利用した人も四%に達していることを報告しています。 一方自動車業界側では、実際にOBやM社のカーポイント、オートウェブなどオンラインで新車を購入した人は二%程度と推測しているようです。

これを金額に換算すると約六○億ドルとなります。 ちなみに新車購入者の年間合計は一五○○万人です。
つまり米国ではインターネットを使って少なくても年間一一一○万台、価格にして六○億ドルもの自動車が販売されているのです。

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